ニッチなトピックへの情熱+ハードワーク+時間=シチズン・ジャーナリスト(エリオット・ヒギンズ氏) ?
興味のあることに対して情熱を持って情報収集をして発信する。ー言うのは簡単だけれど実際にやるのは難しいですね。ただそんな人が稀にいます。シリアでの紛争における武器の移動を追跡するブログ「ブラウン・モーゼス(Bworn Moses)」の筆者、エリオット・ヒギンズ(Eliot Higgins)氏は、大砲やロケット発射装置に関する類い稀な知識を全てYoutubeの動画、Twitter上でのやりとりなどから習得、2012に始めたブログがきっかけで今ではニューヨークタイムズ、フォーリンポリシーなどでその見識が評価され、ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルからも一目置かれている著名ブロガーです。
日本語でも昨年12月に平和博さんのブログ『新聞紙学的』で丁寧に彼の活動が紹介されています。是非チェックしてみてください。
*『ゲーマーがピュリツァー賞記者を否定する | 新聞紙学的』(12/21/2013)
今回ヒギンズさんの活動に興味を持ったのはメディア関連サイト「ギガオム(Gigaom)」の記者マシュー・イングラム氏(@mathewi)がヒギンズ氏と行ったディスカッションについての記事に最近の彼の活動の紹介が詳しく紹介されていたからです(パネルディスカッション動画はイタリアのペルージャで4月末に開催されていたインターナショナル・ジャーナリズム・フェスティバル #ijf14 より)
たった2年程前、33歳の時に当時働いていた金融機関の事務職を解雇され、生まれたばかりの赤ちゃんを育てながらそれまでに専門知識が全くなかったシリア情勢、武器に関する知識をYouTubeのビデオを大量に見ることで身につけ、ジャーナリズムのトレーニングもないままでブログ「ブラウン・モーゼス(Bworn Moses)」を始めたことが全てのきっかけだそうです。
毎日登録してある400〜600程のYouTubeの動画チャンネルに目を通し、特別な機材を使うことなく、何時間も何時間もかけて情報を見つけ出し、その情報が正しいものか、意味あるものかを見極め、こつこつ、こつこつとブログに情報をアップすることで、通常の大手新聞やテレビの特派員が見極めることが出来ない情報を見いだすスキルが自然に身についたそうです。なぜ長年の経験を積んだジャーナリストが見つけることが出来ない情報をアマチュアブロガーが見いだし、ニューヨークタイムズの記事の情報源になったり、英国議会での質疑の際に参照される程までのインテリジェンスを見いだすことが出来たか、という質問に対し、本人はさらっといってのけます。「記者さんは原稿の〆切や取材で忙しく、時に1日18時間もコンピュータの前でビデオをひたすら見るということは出来ないからね」と。
政府機関などが持っている公的な情報の分析、自然災害や紛争地域での現場の状況把握など、リアルタイムな対応やその分野の専門知識による見立てが必要なことに対する報道に関しては市民を巻き込んだオープンソースのアプローチ(「シチズン・ジャーナリズム」と紹介されることもあります)が今とても話題になっています。「従来の記者」対「新興ブロガー」という対立構造としての議論ではなく、いい意味でのコラボレーションが進むことが望まれていますが、第2、第3のヒギンズさんが今後きっと登場するのではないか、ということを強く思います。
ヒギンズさんは今年の7月に英新聞社「ガーディアン」が開催するジャーナリズム講座の講師として登場予定です。今後の活躍にも是非注目したいですね。
How to be a citizen journalist with Brown Moses | Guardian Masterclasses | theguardian.com
<参照>
ヒギンズさんの活動の紹介はこちらの動画(4分程度)がよくまとまっています。
Brown Moses: the British blogger tracking Syrian arms – Channel 4 News
市川裕康
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