アメリカのデジタルメディア、マーケティングトレンドに興味のある方なら名前は聞いたことがあるかもしれない、「Contently(コンテントリー)」という会社があります。
2010年にニューヨークで創業、大企業から中小企業まで、ブログなどの企業の情報・コンテンツ発信を支援し、コンテンツ管理のためのソフトウェアを提供するスタートアップ企業です。同社はここ数年で急速に注目を浴び、現在ではGE、GM、コカコーラ、Google、ペプシ、ウォルマート、アメリカン・エクスプレスなどの超大手ブランドのコンテンツを5万人以上が登録するコンテンツ・クリエーターネットワークにより支援するまでに成長しています。今年の初めには900万ドルを調達、合計1100万ドルのベンチャー投資を受け、社員も急速に増え現在75名、年間売上も8桁(1億ドル)台とのことです。
Shane Snow’s Story Behind His Storytelling Empire Contently | News – Advertising Age
多くの方が気づいているように、すでにバナー広告やSEO対策の効果が薄れつつあり、良質で価値のあるコンテンツ(ブログ、白書、動画など)を提供することでソーシャルメディア上で共有してもらい、多くの人にブランドやサービスを知ってもらい、ファンになってもらうことでマーケティング活動に活かそうとすることを「コンテンツマーケティング」と呼び、日本でも次第に注目を集めています。日本ではイノーバさんなどがイメージとして非常に近いですね:)
そのコンテンツマーケティング分野での注目企業であるContentlyの若き共同創業者の一人、Shane Snowさんが2014年9月に出版した書籍が以下の「スマートカット」です。
今日と昨日でまとめて一気に読んでみたのですが、とてもとても刺激的な書籍でした。メディア、PR関係者、起業家、社会起業家、ビジネスパーソンなど幅広い人に広く読まれる本になるのではないかと思います。読み終えてすぐ思い出した類書はマルコム・グラッドウェルが2002年に出版した『The Tipping Point: How Little Things Can Make a Big Differenceです。この本は最初はほとんど日本で知られなくて、最初の邦訳名『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』からその後『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』にタイトルを変更して文庫化されてます。マルコム・グラッドウェルの知名度が高まるのに合わせてじわじわと売れ出したような本という印象があります:)。スノーさんの本もグラッドウェルさんの本も、いろいろな物語を紡ぎながら仮説を検証していく、というタイプのエッセイ・ビジネス書の王道のようなスタイルですね。
著者のスノーさんは現在30歳、アイダホ出身で地元のブリンガム・ヤング大学を卒業後ニューヨークに移り、コロンビア大学のジャーナリズムスクールを卒業、その後フリーランサーとして短期間のうちにGimodo, Mashable、FastCompany、 Wired、New Yorkerなどでライターとして活躍、ジャーナリストとしてのトレーニング・実績を持ち合わせている人物です。その後Contentlyを友人2人と創業、その間に出会った様々な分野で活躍する「成功者」を間近に見る過程で、彼らの共通するエッセンスにどのようなことがあるか、ということに興味を持ったそうです。
書籍の中では、いろいろな分野で活躍している人がいかに人と違う考え方・方法でHackingをしているか、単にズルをして近道(Shortcuts)を選んでいるのではなく、新しい考え方を取り入れ、価値を生み出すような形で、短期間で想像もできなかったような実績を出している人たちが(SmartCuts)、次から次へと物語として紹介されていきます。水平思考(lateral thinking))などの言葉もよく言及されています。
例えば以下のような人物たちが、大量のデータ、書籍、そして直接の取材から得た洞察に基づいて、読み物として引き込まれるように描かれています。
・ジミー・ファロン(トークショーホスト(The Tonight Show))
・イーライ・パリサー(バイラルサイトUpworthyの創業者)
・イーロン・マスク(スペースX社(宇宙開発)共同設立者・CEO)
・JJ・エイブラムズ(映画監督)
・チェ・ゲバラ(革命家)
・アメリカ歴代大統領(アメリカ大統領就任時の平均年齢と下院議員、上院議員の平均年齢をみて驚きでした・・・)
・ドウェイン・エドワード(元ナイキ リード・デザイナー)
スマートカットを実現させるため、最終的に以下の9つのポイントが大切、と指摘しています。
1) Hacking the ladder (ハシゴを攻略する:決められた従来の方法以外を見つけ出す)
2)Training with Masters (その道のプロを目指し地道な訓練をする(身近にメンターがいなければ歴史上の人物から学ぶことも)
3)Rapid Feedback (常にフィードバックを求めることで改善のヒントを得る)
4)Platforms (人とのつながり、自分の経験を活かしながらプラットフォームを構築する)
5)Catching Waves (時代の流れなどを味方につける)
6) Superconnecting ( よい意味でのネットワーキングを大切にする。自分が得たつながりを人のためにもPay Forwardする)
7) Momentum (機運、それまでの実績をその後に繋げる)
8) Simplicity (できるだけ物事をシンプルに)
9) 10X Thinking(10倍思考、ものごとを少しよくするのでなく、実現できそうでなくとも意義・大義のある大きな夢・目標を掲げることで支援やコラボレーションをより産みやすくする)
こうして読むといわゆるビジネス本・自己啓発書的な側面が強く感じられますが、この本が素晴らしい!と思ったのは著者による丁寧なストーリー展開の構成がとても優れてると思ったからです。そして、アメリカのビジネス、アート、経済、政治、コメディアン、ミュージシャン、社会起業家などの舞台裏の今まで知らなかったような物語が巧みに語られ、共感が感じられたところでした。

Contently社の中にはこんな標語が壁に掲げられているそうです。
「Those who tell the stories Rule the World (ストーリーを語るものが世界を制覇する)! 」
書籍を読み、いくつかのスノーさんのプレゼンテーションを見るにつけ、彼が実際に描いているビジョンは以下のようなものであることを強く感じられます。
「Those who tell the stories Change the World(ストーリーを語るものが世界を変える)!」
そしてなにより、コンテンツマーケティングがもはやバズワードとして広がりつつある中で、スノーさんが率いるContentlyが見せている大躍進ぶりに強く興味がそそられます。自戒も含め、今後どのような情報発信、ストーリーテリングが求められるか、ということを考える際、多くのヒントが詰まっている一冊なのではないかと思います。
市川裕康
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