設立からちょうど2年が経ち、昨年のピーク時には月間約9000万人のサイト訪問者を誇り、社会的なメッセージが込められた動画・画像コンテンツをリパッケージして共有させるというバイラル・ニュースキュレーション・サイト、「アップワーシー(Upworthy)」。耳にしたことがある方もいると思います。ただ以外と知られていないと思われるのがUpworthyの創設者であるイーライ・パリサー氏(@elipariser)が3年前に書いた本、『閉じこもるインターネット〜グーグル・パーソナライズ・民主主義(原題:Filter Bubble~What The Internet Is Hiding From You) 』です。

海外、そして日本国内でもバイラルサイトが沢山生まれるようになり、そして大手メディア、NPO、市民活動団体、個人ブログでさえも「コンテンツ・マーケティング」という新しいキーワードとともにUpworthyにあやかり、多くの人にコンテンツを見てもらいたい、と思う時代において、同書は改めて必須の書籍なのではないかと先日読んでみてその思いを強くしました。またUpwrothyの今日の爆発的なユーザー数の増加・注目ぶりが突然生まれた分けではなく、緻密なリサーチと過去の経験・洞察に基づいたものであることがよく分かる内容になっています。

*Upwrothyに関しては昨年7月、現代ビジネスの記事で一度レポートさせていただいたことがありあます。
開設14ヵ月で月間ユニークユーザー数が3000万! ~史上最速で急成長するバイラル・メディアサイト「Upworthy」の秘密|「デジタル・キュレーション」 | 現代ビジネス [講談社]

Upworthy のFacebookページでの「いいね」数は現在600万人以上で、直近3日間の投稿を見ただけでも1万回以上シェアされている投稿が8本もあり、今まで日の目を見ることがなかったような社会的な課題に関するテーマ、例えば気候変動、経済格差・貧困、人権などに光を当てる新興メディアということでとても注目を集めています。本当に意義あるコンテンツのみを見つけ出し、多くの人に興味を持ってもらえるようなタイトルを最低25個挙げ厳選し、TwitterよりもFacebookのプラットフォームを重視することでバイラルは作り出せる、というような説明がされることもよくあります。

『閉じこもるインターネット』が書かれたのは3年前、Upworthyが生まれる前、そしてイーライ・パリザー氏がエグゼクティブディレクターとして率いていたアメリカ最大規模のリベラル系市民政治団体「Moveon.org 」(現在の会員規模は700万人以上)のオンライン・プラットフォームの運営を行っていた頃に遡ります。Facebook, Google, Amazonなどを当たり前のように多くの人が使うようになり、知らず知らずのうちにインターネットを通じて出会うコンテンツが「最適化」され、自分が普段接するニュース、情報、考え方がどんどん偏狭なものになっているという危険性について同書は指摘します。また社会にとって大事なニュース・情報が大量に溢れる情報の中で埋没する一方、ゴシップ、スポーツ、センセーショナルなニュースばかりが多くの人の目に止まるような今日のインターネットのあり方に豊富な事例を通じて問題意識を投げかけています。

10分で概要を知りたい方は以下のTEDトーク(日本語字幕付)をぜひご覧ください↓

また今日のUpworthyの現状については、創業者であるイーライ・パリサー氏自らが登壇した、今年の3月上旬に開催されたばかりのSXSWの時のアーカイブ動画がアップされています。ニューヨークタイムズのデジタル・メディア担当コラムニスト、デービッド・カー氏が聞き手として本音の部分を聞き出している貴重な内容です。

SXSWでのセッションの概要はこちら(Gurdian)
Upworthy’s Founder Talked At SXSW… And You’ll Never Guess What He Said | Technology | theguardian.com

メディアの情報発信者としては多くの人が知る必要がある本当に大切で意義のある情報・ニュースと、かわいい猫の画像など、多くの人が関心を持つような感情的でセンセーショナルな情報とをどのようにバランスを持たせ、アルゴリズム、或は目利き力を活かしたキュレーションを行うべきか、また個人としてはどのようにしてアルゴリズムに支配されず、偶然の出会い(セレンディピティ)に巡りあうことが出来るか・・・。すぐに答えが出る問いではないものの、深く考える必要性が今後高まるのではないのではと感じます。もう一度精読してみたいと思える一冊でした。

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
イーライ・パリサー
早川書房
売り上げランキング: 204,185

市川裕康
email|Twitter (SocialCompany)|Linkedin|Facebook Page|メルマガ

会話に参加しませんか 3件のコメント

  1. […] 例えば、アメリカのキューレイションサイト、UPWORTHYはひとつの記事をアップするために最低25個のタイトルを考えて、どれが一番ユーザーにクリックされやすいかを社内で話しあってから、記事をリリースしており、「タイトルを考える」ことにものすごい時間を使っています。 […]

    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

カテゴリー

book, curation, media innovation, その他